医療法人 八子胃腸内科クリニック

福島市の消化器科,胃腸科,内科なら八子胃腸科内科クリニック

〒960-8136 福島県福島市八島町2-3
TEL 024-533-1215/1216
※上記QRコードを読み取っていただきますと、一般の携帯からは携帯サイトが、スマートフォンからは、スマートフォンサイトが閲覧可能です。

経口内視鏡VS経鼻内視鏡

経鼻内視鏡の現状

胃の内視鏡検査でよく耳にする経鼻内視鏡とは従来の経口内視鏡よりも細く患者さんへの苦痛、負担が少ないとして2000年頃に開発されて急速に普及してきており、今では胃の内視鏡検査の相当な割合を占めてきています。新しく登場してきた検査法にはよくあることですが、そのメリットのみが強調されて、患者さんのみならずそれを用いる医師側にさえもそのデメリットが正しく理解されてないという事が多々あります。
経鼻内視鏡と経口内視鏡を全く同じものと考えている人も多いと思いますので、その違いについて詳説したいと思います。

 

経鼻内視鏡のメリット

経鼻内視鏡のメリットはただ一点、内視鏡が細いために患者さんの苦痛、負担が少ないという事のみです。経鼻内視鏡は大体太さが5~6mm、経口内視鏡だと施設によって差はありますが、大体7~10mmくらいで、ちなみに当クリニックで使用している内視鏡は7~8mmくらいで経鼻内視鏡とは2mm程度の差です。
ただ、経鼻内視鏡といってものどを通らないで胃の中に入る訳ではなく、下咽頭(物を飲み込む所)までの通り道が違うだけで、のどを通る事やのどを通った後は全く一緒です。
一般に経口内視鏡の場合は舌根部に内視鏡が当たるために嘔吐反射が誘発されると言われていますが、マウスピースの改良、のどの麻酔の量の調節で当クリニックでは下咽頭から食道入口部の通過時に嘔吐反射が出る方はいても舌根部では反射が出る方はほとんどいません。
また、数年前に日本消化器内視鏡学会で行われた検討では経鼻内視鏡で苦痛が少ないのは経鼻というルートの問題ではなく、内視鏡自体の細さによるものだとの報告がありました。つまり、経鼻内視鏡用の細い内視鏡を口から入れても経鼻内視鏡と同様に苦痛は少ないという事で、実際その様な方法で行なっている施設もあります。
また経鼻内視鏡のメリットとして検査中に会話ができるという事をあげる人もいますが、個人的には検査中に患者さんにこちらから声かけをする事はあっても、会話ができなくても検査上は特に支障はないと考えております。

 

経鼻内視鏡のデメリット

前述した内視鏡の太さの2~5mmの差というのは内視鏡の性能には大きく関わり、内視鏡の先端に装着されているCCDカメラの解像度、操作性、視野角(観察できる角度)、胃の中で出す光の強さなど犠牲にした上で細くなっている事を忘れてはなりません。たとえてみれば携帯電話やスマートホンについているCCDカメラとデジタルカメラの専用機のCCDカメラの性能の違いのようなものです。また、細くなっているがために鉗子孔(病変があった時に組織を採取するための道具が通る部分)が細く十分な組織が採れなかったり、送気孔が細いために胃の中を膨らませるのに時間がかかったりという難点もあります。最近は内視鏡メーカーの努力でかなり性能面の改善はされてはいますが、トータルの観察力という点では従来の経口内視鏡には劣る事は否めません。
その観察という事に関して2013年の消化器内視鏡の専門誌(貝瀬 満:早期胃癌の見逃しの実態とその原因に応じた精度の高い内視鏡診断 消化器内視鏡10:1650-1663、2013)に我々内視鏡医にとっても衝撃的な論文が掲載されていました。それは早期胃がんの見逃しがどの程度起きているかという内視鏡診断能の比較臨床試験で、すでに病変がある事がわかっている患者さんを対象に、その情報を全く知らされていない2名の内視鏡専門医が同一検査日に別々に高精細内視鏡(経口)、経鼻用極細径内視鏡を用いて内視鏡診断を行い、その内視鏡の早期胃がん診断能を検討したものです。なんと熟練した内視鏡専門医が施行しても経口内視鏡で22%、経鼻内視鏡ではその約2倍の41.5%の早期胃がんを見逃していたという驚くべき結果でした。内視鏡の専門病院でもこのような結果でしたので、市中病院、診療所レベルではさらに多くの見逃しがあって特に経鼻内視鏡の検査数の増加に伴い、今後は見逃し例は増えてくる事が推測されます。特殊なスキルス性の胃がん以外は1年以内に内視鏡を受けて異常がなかったのに、その後の検査で進行がんが見つかった場合は見逃し例と考えてもいいでしょう。
現在の消化器臨床の現場では経鼻内視鏡は苦痛の軽減目的に主に開業医を中心に普及しており、消化器内視鏡の専門病院では患者さんの強い希望があれば経鼻内視鏡を施行することはあっても、今でも基本的には経口内視鏡で施行する施設がほとんどである事実からも、その診断能・観察力の違いは明白だと思われます。
その他、経鼻ルートに伴う特有の事象としては鼻とのどの両方に麻酔をしなければならない点、検査後に鼻痛や鼻出血が起きたり、100人に1人くらいは鼻から挿入できない人がいると言われています。

 

それでも経鼻内視鏡で受けたい人へ

当クリニックではより確実で正確な検査が第一と考えており経鼻内視鏡は導入していませんが、経口内視鏡はとっても辛くて受けられないので、上記のデメリットを理解した上、どうしても経鼻内視鏡を受けたい方に経鼻内視鏡を受ける施設選びのポイントをお教えします。
まず第一に施行医が経口内視鏡の十分な経験がある医師である事です。経鼻内視鏡は医師にとっては飲ませるのは楽ですが、十分な観察・操作は難しいという矛盾をかかえています。内視鏡検査に熟練した医師でなくても、場合によっては経口内視鏡の施行経験が全くない医師にでも簡単に飲ませる事ができる様になってしまったために施行する医師側のハードルが下がってしまったのです。つまり表現は悪いですが、手軽に金を稼げるという理由で観察・操作が十分にできない内視鏡非専門医も気軽に施行するようになってしまっています。ただ内視鏡というのは外科手術と同じ様に一朝一夕に出来るほど簡単なものではありません。みなさんは怪我をした時に内科を受診しますか?餅は餅屋ということわざを思い出してみて下さい。
ただでさえ操作性が悪い経鼻内視鏡を扱うのには経口内視鏡を十分に使いこなせる技能を持っている事が大前提になります。その辺の判断は非常に難しい所ですが、十分な経口内視鏡の施行経験・実績がある医師は大抵日本消化器内視鏡学会の指導医(注:通常の専門医であれば学会入会後5年以上経過して筆記試験に受かればほぼ誰でも取得可能)を取得している事が多いので、指導医かどうかを確認してみるのが良いでしょう。消化器内視鏡学会にも入会していない医師は基本的に論外です。それを確認するのが難しいようなら、経鼻内視鏡をメインで施行していても経口内視鏡の経験が豊富な医師であれば、ほとんど間違いなく経口内視鏡も常備してますので、その施設に経口内視鏡があるかどうかを確認してみるのも良いでしょう。